« サンジャポデータの不可思議 | トップページ | 高投票率なんて必要ない »

2009年8月 6日 (木)

民主党『詳細まったく考えてません(キリッ)』

 とゆーわけで、昨日は体調不良でイロイロなモノが出ておりました東雲です。
 夏風邪って怖いですね。
 皆様もご自愛ください。

 さて、そんなわけで本日の記事ですが、先日書きました『サンジャポデータの不可思議』について、『とある方』からコメントをいただきました。
 ……まぁ『とある方』って、別にもったいぶってるわけではなく、単に名前をいただけなかっただけなんですが……。

 ともあれその『とある方』から『廃止される扶養控除に特定扶養控除、老人扶養控除は含まれないから63万云々はおかしいんじゃないか。もうちょっと調べて書け』と、そういったコメントをいただきまして、しかしそもそも東雲としては『サンジャポデータおかしいんじゃねぇの?』という趣旨の記事で税制どうのと細かく論じる意義が見出せず、またどういう形式で『含まれない』のかも分からない(少なくとも東雲が参考にしている民主党INDEX2009に詳細は無い)、そんな状況で『特定扶養63万丸々残ります』なんて書けようも無かったわけでございますが、それでもなおご不満のようでございましたので、折角ですから本記事にて詳細に取り上げようかなと思う次第でございます。
 もう『とある方』にも納得いただけるように数字ガリ使いですよ。

 さて、そもそもの問題は何かと申しますと、民主党の目玉政策であります『子ども手当て』、これに伴う『扶養・配偶者控除の廃止』でありますが、そもそも『扶養・配偶者控除って何? 美味しいの?』という方のために簡単に説明しておきますと、これは嫁さん(あるいは婿さん)、養っている子どもなどがいる場合に税金が安くなる、そんなステキシステムでございます。
 
 まぁこれだけ言ってもよく分からんでしょうから、具体例を示して説明いたしましょう。

 まず、例えば額面で年収500万のサラリーマンがいたとします。
 仮にAさんとしますが、実はこの時点ではAさんが税金をいくら払うかということは決まっておりませんで、実はAさんに税金を払ってもらうにはまず『給与収入(年収)』を『給与所得』にしなくてはなりません

 ここで、『給与収入』から『給与所得』を出す計算式は、実は収入によって違うのですが、Aさんの場合、年収が500万ありますので『『給与収入』÷4×3.2-540,000』となります。

 すなわち、

 『給与所得』=5,000,000÷4×3.2-540,000=3,460,000

 ということで、Aさんの『給与所得』は346万となりました。
 厳密にはこの他にも色々所得があるんですが、今回はパス。

 さぁじゃあこれで税金払えるだろうとお思いの貴方、甘いです。
 カルーアをマッ缶で割るよりも甘いです。
 ……マッ缶って関西にはあるんですかね?

 閑話休題。

 Aさんが税金を払うには、更にここから『控除』を差っぴかなければいけません
 そしてこの『控除』こそ、今回の本題であります『扶養・配偶者控除』なわけであります
 ……まぁ本当なら『扶養・配偶者控除』以外にも『社会保険料控除』やらなんやら一杯控除があるんですが、めんどいんでこれもパスです。

 で、その『扶養・配偶者控除』。
 厳密には『扶養控除』と『配偶者控除』ですが、これは先にも述べたとおり、早い話が養ってる嫁さん(あるいは婿さん)や子どもがいる場合に『課税対象となる所得金額』を安くしましょうと、そういったものでございます。
 具体的に、Aさんに健康な嫁さん(専業主婦)と、これまた健康な息子(中学2年生)、娘(小学5年生)が一人ずついた場合、『配偶者控除』で38万円、『扶養控除』で38万が二人分の76万円、さらに『基礎控除』で38万円、『課税対象となる所得金額』がお安くなります
 『課税対象となる所得金額』=『給与所得』-『控除総額』でありまして、

 すなわち、

 『課税対象となる所得金額』=3,460,000-(380,000+380,000×2+380,000)=1,940,000

 ということで、Aさんの『課税対象となる所得金額』は194万となりました。

 『所得税額』はこれに『税率』をかけるものでして、Aさんの『税率』は『課税対象となる所得金額』=194万円ですから0.05倍となりまして、
 『所得税額』=『課税対象となる所得金額』×『税率』から

 『所得税額』=1,940,000×0.05=97,000

 つまりAさんは10万円弱の税金を払わなければならない、ということになります。
 まぁ実際はほぼ確定で社会保険料控除が付くんで、もっと安いですけどね。

 ちなみに『扶養・配偶者控除』が廃止された場合、Aさんは38万×3の控除がなくなりますから、

 『課税対象となる所得金額』=3,460,000-380,000=3,080,000
 『所得税額』=3,080,000×0.1-97,500=210,500

 と、21万オーバー
 2倍以上ですね。
 まぁ、あくまで現行の税率が維持された場合ですが。

 さて、そんなわけでAさんを具体例に挙げて所得税を計算してみましたが、いかがでしょうか?
 余分な部分を差っぴいて、必要なところだけ使っての計算でしたが、おそらくそれでも分かりづらかったんじゃないかと思います。

 なぜ分かりづらかったか。
 東雲の説明が下手だったから?
 ……いや、そりゃあるかも知れませんが……それはおいといて……。

 ともあれそんな分かりづらい原因、それは税金の計算方式が納税者の環境によって大きく変わることなんじゃないかと東雲なんぞは思います。

 と申しますのも、今回は健康な嫁と子ども二人(いずれも中学以下)を持つ年収500万のAさんを例としましたが、例えばAさんが年収660万を超えれば『給与収入』から『給与所得』を出す計算式も変わりますし、嫁さんや子どもが障害を持っていた場合はそれぞれ『配偶者控除』『扶養控除』が変わり、更に『障害者控除』が加わり『控除総額』が変わりますし、さらに子どもが高校(16歳)~大学(22歳)だった場合は『扶養控除』に『特別扶養控除』が加算され、やっぱり『控除総額』が変わります
 『控除総額』が変われば『課税対象となる所得金額』が変わり、『課税対象となる所得金額』が変わると今度は『所得税額』を出す計算式まで変わっちまうってんですから、もう何がなにやら。

 そしてこれこそが、東雲が『どういう形式で『特定扶養控除が含まれない』のかも分からない』と申し上げる意味でございます。

 具体的に申し上げますと、『扶養控除』に関して、基本額が38万円
 しかしその対象が高校(16歳)~大学(22歳)だった場合は『特別扶養控除』の25万が加算され63万が控除額となります。
 さらに扶養対象者が特別障害者である場合は『扶養控除』に35万が加算されます。
 ですので特別障害者の場合、一人当たり基本額が73万円、特別扶養家族の場合は98万円
 老人扶養も似たようなものでありまして、基本額に20万(同居老親等以外は10万)が加算され、特別障害者の場合はそこに35万が加算されます。

 しかしこれらは基本として『扶養控除』に加算されるものであり、確定申告の際も『扶養控除』の記載欄しかございません。
 民主の言う『特別扶養控除・老人扶養控除は含まない』というのが、『扶養控除』に加算した額丸々残すのか、あるいはそれぞれ加算分だけ残すのかがさっぱり分からないのです。
 また先に述べましたとおり、これらは『扶養控除』に加算されるものですので、『扶養控除』廃止となった場合、『特別扶養控除』『老人扶養控除』を独立させて残すのか、あるいは一端廃止して別控除で相当額を補うのか、その場合本当に『相当額』を補えるのか、という疑問もあります。

 配偶者控除に関しても同じで、配偶者も特別障害者の場合は35万が加算されるのですが、これがどうなるのか。
 あるいは配偶者の所得額が38万円(収入103万円)以上76万(収入141万円)未満の場合は配偶者控除の変わりにその額に応じた配偶者特別控除があるのですが、それがどうなるのか。

 寡婦・寡夫控除の扱いはどうするのか。

 加えて現在の税率はあくまで現在の控除を踏まえてのものであり、税率に関しては手を付けないのか等など、挙げ続けたらキリがありません。

 まさにブラックボックスであり、こんなもんを文節に持ってくるわけにはいかないのです。

 ……が、かといって分からないままにしておくのも気持ち悪い。
 こちとら科学屋の端くれですから、ホントのところはどうなのさと、まぁやっぱり気になるわけでございます。

 で、分からなかったら人に聞く、なんてのは人として初歩の初歩でありまして、東雲も聞いてまいりましたよ。
 駅前で街頭挨拶やってる次期民主党公認候補(であろう)某氏に。
 上述したような疑問があるが、『実際のとこどうなのその辺?』と。
 で、その某氏のお答え。

 「現在、党の方で詳細を検討してます」

 決まってねぇのかよっ!

 いや東雲唖然ですよ。
 素で突っ込みそうになりましたよ。
 まぁ東雲もリアルでは建前と本音を操る程度の能力を持ち合わせておりますから、ビラだけ貰ってにっこり笑って退散いたしましたけれども。
 ちなみにその人、ウェブサイトで子ども手当てについて熱く語ってましたよ?
 なんでそんな重要なことが決まってないのにのほほんと街頭出てられんのと東雲二重にびっくりですよ。

 いや、当人は笑顔の似合うニーチャン(つーてももちろん東雲より年上)で、対応も丁寧でしたし、そんなボロクソ言う気はありませんけど。
 それにしたってどうなのかと、そう思わずにはいられません。

 よく『扶養・配偶者控除廃止』批判に対し、民主支持者が『扶養控除(一般。高校生・大学生等を対象とする特定扶養控除、老人扶養控除は含まない。)』という文言を得意げに持ち出してくるのを諸所で見かけるんですが、その金科玉条がメッキやガラス玉で出来ていないか、しっかり確認しておくべきじゃないかなぁと、東雲なんかはそう思います。

|

« サンジャポデータの不可思議 | トップページ | 高投票率なんて必要ない »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 民主党『詳細まったく考えてません(キリッ)』:

« サンジャポデータの不可思議 | トップページ | 高投票率なんて必要ない »